人生観を変える【数学ガール ゲーデル編】大人が学ぶと、「考え」が180度転回します

数学ガール

数学が、いかに美しく面白い世界かを実感できます。

数学ガール ゲーデルの不完全性定理

数学の学び直しに、超オススメの本です。

この本のいいところは、数学の理論を、文学的表現で語ってくれるところ。

文系出身者には、とても有り難い。

ストーリーとして数学を理解できるので、どんどん心にしみいってくる。

特に気に入ってるのは、このフレーズ。

厳密に考える、定義を大切に、言葉を大切に

数学って、言葉が大切だったんです。

そして、いったん自分の感覚を捨てることで、逆に、自分の感覚を磨いていく。

これはとても新鮮。

感覚に頼るのではなく、論理に頼る

言葉に頼るのではなく、数式に頼る

直感で生きていきたいんだ! って人にも、やはり論理や数式で考える力は、とても重要。

数式は、あなどれません。

そんなことを感じたので、ちょっと引用文多めですが、ご紹介します。

ぜひ、「考える参考」に、してみてくださいね。

例示は理解の試金石

仮定してから、証明を進める

小説の中で、「数学的帰納法」の話が出てきます。

「自然数 k に関して P(k) が成り立つと仮定します……」

そこで後輩が叫ぶ。

そんなやり方、「すっごくおかしいですよ」と。

つまり、こういう疑問。

  • 話は、前から順番に進めていくべきでは?
  • なぜ最初に、結論を仮定してから始めるの?

この話、日常でも、とても役立つと思います。

私は、この部分を読んで、とても感動してしまいました。

「仮定して証明」ってすごいな、と。

私たちはふだん、自然と、順番どおりに考えるクセがついている。

そこをひっくり返して、「仮に◯◯が成り立つとして……」と、仮置きしてから話を進めることに、違和感を抱くんですね。

ひっくり返すと、見えなかったものが見えてくるようになる。

「仮に」は、いわば「開けゴマ」。

新しい扉を、開く鍵。

どんなに当たり前に思えることでも、「仮に……」をつけてみましょう。

たとえ当たり前なことでも、具体例を挙げて考える

「当たり前」も大事だよ。当たり前の例でも、自分で作ってみる。当たり前のことでも、自分で言葉にしてみる。勉強では、そういうのが大事なんだよ。

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

「常識を疑え」って言葉をよく聞きますが。

果たして、ここまで丁寧に、「仮に……」と例を挙げながら、考えているのかどうか。

本当に、自分の頭で考える覚悟はあるのかどうか。

そんなことを、突きつけられた思いがして、驚きとショックをおぼえました。

「常識を疑う」なんて、数学の世界では日常茶飯事。

それも、具体例を挙げながら。

人の心は具体例を圧縮する。無意識にパターンを探し、短い表現を見つけるのが人の心だ。

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

「考える」ことの意味が、ガラッと変わります。

数学は、「考える」ことの意味を変える

「わかるまで」考える

「わかったふり」は厳禁

しっかり自分の頭で考えるのはとても大事だ。授業が終わってからも、時間をかけて考える。

(中略)

決して「わかったふり」はしない。「ここは、まだわかっていない」と意識する。ほんとうに納得するまで考え抜く。真剣にやればやるほど、勉強はおもしろくなる

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

「自分で考えなさい」とも、よく言われますよね。

でもそんなとき、こう思いませんか?

考えてるんだけど……?

あるいは。

わからないから聞いてるのに……

  • 自分では考えてるつもり
  • 考えてもわからないから聞いている

それなのに、「自分で考えろ」と言われてしまって、イヤになってきますよね。

私たちは、「考える」の意味を知らなすぎ。

「どこがわかってないんだろう」という問いが、学びの基本

たとえば、「数学的帰納法」がわからないとしよう。「自分は、どこがわかってないんだろう」って鏡に向かって――つまり、自分自身に――訊こう。つい「ぜんぶ、わからない!」って言いたくなるけれど、そこで、ぐっと踏ん張る。そして、自分はどこからわからなくなるのか根気よく探す。自分にとっての

わからなくなる最前線

を探そう。ここだ!……と最前線が見つかったなら、本屋に来て、参考書を開く。

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

手順はこう。

  • 「何がわからないのか」を自問する
  • 「わからなくなる最前線」が見つかるまで徹底的に探す
  • 見つかったら、本を探す(人に聞く)

「わからなくなる最前線」を見つけよう

「わからなくなる最前線」は、他人にはわからない。

自分が見つけるしかない。

そこが見つかったら、本を読んだり、人に聞いたりすればいいんです。

「考える」ことが、だんだん明確になってきました。

そのうえで、「自分はわかってない」と言える勇気を持つ。

「いや、自分はわかってない」と言う勇気

たとえ、世界中の人が「わかった、簡単だよ」と言ったとしても、自分がわかっていなかったら「いや、自分はわかっていない」と言う勇気。それが大切なんだ。他人がいくらわかっても、自分がわからなければ無意味。時間をかけて考える。納得するまで考える。そうして得たものは、一生、自分のもの。決して誰にも奪われない。真剣な勉強をていねいに積み重ねていくことが、自信につながる。

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

「考えすぎだよ」って言われたり。

「そんなことも、わかんないの?」って言われたり。

考えることがイヤになったきっかけとは、他人からの心無い言葉だったのかもしれない。

いつしか思ってしまったんですよね。

「考えてもムダだ」と。

そんなときにでも、「いや、自分はわかってない」と言う勇気。

自信が持てるか持てないかの境界線は、「勇気」だったのではないか。

そんなふうに考え続けると、当然のことながら、時間がかかります。

誰もが通ってきた、想像を絶する道のり

急ぐ必要はないよ。だって、数学が現在の形になるまで、何百年も何千年もかかっているんだよ。各時代の最高の頭脳が知恵をしぼりにしぼって……。いま数学の本に載っている記号や、数式や、考え方が生まれるまでには、想像を絶する道のりがあったはずなんだ。だから、見てすぐわからなくてもいいんだよ。

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

現代は、「今すぐ・簡単・誰でも」というセリフが定番になるほど、「早くて簡単」が求められる時代になりました。

  • スマホですぐ調べられる
  • 時短術
  • 1分でわかる

私たちは、1分でさえも「待てなくなっている」。

そんな時代に。

難しい数式とじっくり向き合うという姿勢が、むしろ新鮮。

数学というと、パパっと計算するイメージがありましたが。

実は、ものすごく気の遠くなるようなことを、時間をかけてやっている。

忍耐力を、ふたたび取り戻したいですね。

むしろ「まだわかってない」ほうが、いい

わかった気になるよりは、ずっといい。「この数学の本に書かれているのは、こういう意味かもしれない。でも、ほんとうのところは、自分はまだわかっていないかもしれないな」というくらいがいいんだよ。

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

まさに、ソクラテスの「無知の知」。

「わかったふり」をするのではなく、わからないことを認めてじっくりと考え続ける。

小難しくてちょっと頑固なイメージだった数学が、逆に、とても柔軟だったということに気づきます。

「分けて」考える

分けることは、分かることへの第一歩

複雑な式を読むとき、全体をいっぺんに理解しなきゃと思っちゃだめ。複雑な式も、部分部分は簡単だ。だから、分けて考えよう。分けることは、分かることへの第一歩。

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

  • 複雑な式は分けて考える
  • ギリシア文字が出てきてもあわてない
  • 変数の意味を考える
  • 絶対値の意味を考える
  • 図で表してみる
  • 不等号の意味を考える

パニックにならずに、ひとつひとつ丁寧に。

分けてみれば、意外と見えてくる。

場合分け」って言葉も、数学ではよく出てきます。

「こういう場合ならどうか?」「では、これは?」と。

分ければ、分かる

分けたあとは、つなぎあわせます。

部分を見たら、全体の構造を見る

(部分しか見ないのは)美しいパターンを描くレース模様を見て、「穴が空いているのもいいものだ」というのと似ている。レース模様のパターンが生み出しているものは何かを理解していない。世界を表面だけ観察している。構造を見抜いていない。もっと深い楽しみがあるのに……。

(中略)

自分が関心のある理論は、どんな構造を持つのか。複数の理論の間には、どんな関係があるのか。……それはとても深い楽しみを生み出す問題のはずなのに。

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

「パターン」や「関係性を見抜く」というのは、まさに数学の得意分野。

部分と部分をつないでみると、とても美しい世界が見えてくる。

「幾何学模様」というのも、数学ですね。

物事をよーく観察する。

「構造化」というと難しく考えてしまいがちだけれど、数字で見ればシンプル。

レース模様のたとえ話には、納得。

数学は、美しいです。

部分と全体の往復で、きちんと理解する

有名な論法でも、きちんと理解しているかどうかを確かめるのは大切なことなんだな。「名前を聞いたことがある」や「本で読んだことがある」というレベルと、「きちんと理解している」というレベルの間には、すごく大きなギャップがありそうだ

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

  • 当たり前のことも、
  • ひとつひとつ具体例を挙げて証明し、
  • わからない最前線を見つけ、
  • 部分に分けて観察し、
  • 全体をつなぎ合わせて観察し、
  • 「なんとなく」や「曖昧」を排除し、
  • 厳格に定義しながら、
  • きちんと理解して、
  • パターンや関係性を見抜いていく

こんなことを繰り返していれば、「わかった」とは、安易に言えなくなりますね。

普段、あまりにも「雑に」物事を扱っていないでしょうか。

もうひとつ衝撃だったのが、「意味は考えない」ところ。

「意味」を考えない

ライプニッツはね、「思考」を「計算」に見立てたんだ。論理的な思考を、機械的な計算で行おうと考えた。

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

「機械的な計算」というと、どうしても冷たいイメージがともなってしまいます。

今は、何でもコンピュータがやるようになって、せちがらくなった、と。

でも本当は、「冷たくて、せちがらい」ものではなく、もっと人間的なもの。

機械的な作業が増えたほうが、人間らしさを発揮できるのかもしれませんよ。

機械的な計算のメリットとは?

すべてのことを人的な作業にすると、とてもストレスがかかります。

脳の処理能力が大幅に、減ってしまいますよね。

これを、機械的な計算に頼るようにすると……

大切なことだけに集中できる。

人は誰でも計算だけで、現に最も困難な真理すら判断することになるであろう。以後、人々は、すでに手中にしているものについて、もはや論争することなく、新たな発見に向かうことになろう。

by ライプニッツ

そんなライプニッツの夢が、今や、パソコンやAIとなって現実になっています。

意味を考えず、計算に身をまかせる練習

問題を読んで式を立てた後は機械的計算――意味を考えないでも進められる計算――に身をまかせる練習なんだよね。まず具体例で問題を理解することは大事だけれど、どこかの段階では、「意味の世界」から「数式の世界」へ考えを移す必要がある。式を立てる、ってそういうことだよ。「数式の世界」に行きさえすれば、意味を考えなくても式変形ができる。方程式のいろんな解法が使える。最後に得られた結果を「数式の世界」から「意味の世界」に戻せば、もとの問題が解けていることになる。

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

  1. まずは、具体例で考える
  2. 次に、「意味の世界」から「数式の世界」へ
    • 式を立てる
    • 意味ではなく、純真に形だけを見る
  3. 最後に、「数式の世界」から「意味の世界」へ
    • もとの問題は解けている

この手順、なんにでも活用できますね。

2番目の、「意味の世界」から「数式の世界」へというのは、ほとんどの人にとって盲点だと思います。

「感情」や「直感」はもちろん重要だけど、それだけを見てしまうと、自分の「思い込み」からは抜け出せないですよね。

ずーっと感情論を押し通すのではなく、いちど「数式」へ入れる。

客観的に、抽象的に見る。

いちど、問いかけてみましょう。

自分の感覚は、本当に正しいのか? と。

人間が意味を考えた上で論証すると、根拠が不明確になることがある。一方、意味を考えず、形だけに注目するなら、根拠が明確になる。何しろ、明確に定義されたことだけを用いるから。

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

螺旋が意味するもの

落ち込むな。落ち込むな。落ち込む自分に酔うな。

きみには――すべての次元が見えているのかな。

きみには、円周を回る点しか見えてない。

きみには、螺旋が見えてない。

(中略)

同じように見えるけれど、単なるループではない。

繰り返しながら昇っていく――螺旋だ

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

螺旋とは、こういう形。

螺旋も、数学。

「螺旋階段」は、数式の計算がなければ、できません。

高速道路のカーブも、そう。

螺旋は、英語でいうと、スパイラル

なんだか、かっこいいですね。

「悪循環」という言葉がありますが。

視点を変えてみれば「循環」なんて、していない。

まったく同じ状況・同じ状態に戻ることは、そもそも、ありえないから。

スパイラルで、上へ上へ。

私たちの道は、「螺旋」なのかもしれません。

「きみには、螺旋が見えていない」

自分に言い聞かせたいですね。

ちなみに、こんなのも螺旋。

宇宙も螺旋。

私たちには本当に、「螺旋」が見えていない。

「同じところをグルグルしている」と思うなら、「同じところ」とはどこなのか、定義してみてくださいね。

海に注いで川は終わる。

でも、水の旅がそこで終わるわけじゃない。

そこから水は、天へ昇るのだ。

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

まとめ

  • 例示は理解の試金石
    • 仮定してから、証明を進める
    • 当たり前のことも、丁寧に考える
  • 分かるまで考える
    • 「わかったふり」はしない
    • わからなくなる最前線を見つける
    • 「自分はわかってない」と言う勇気
  • 分けて考える
    • 分ければ、分かる
    • 複雑な式も、分ければ簡単
    • 部分を見たあとは、全体の構造を見る
  • 意味を考えない
    • 機械的な計算にまかせる
    • 意味の世界→数式の世界へ
    • 意味を考えると根拠が不明確になる
  • 循環ではなく、螺旋
    • 単なるループではない

こういう手順を、日常でも取り入れたら、大変革です。

今の自分の悩み、

例示しながら、丁寧に証明できますか?

厳密に考え、定義を大切に、言葉を大切にしながら、

部分を見て、全体を見て、構造を見抜き、

何がわからないのか徹底的に突き詰めて、

問題を解こうとしてますか?

数学の世界は、こんなことを語りかけてくるようです。

いわば「数式の世界」は、この世を映し出す鏡のようなものだよ。うまく映してやると、数式の変形で、この世の問題を解くことができる。

(by 数学ガール ゲーデルの不完全性定理)

数学を、やり直してみたくなりましたか?

シリーズになっていて、どこから読み始めても面白いですよ。

最初の記事はこちら。

数学文系出身の大人が数学を学ぶ3つのメリット【数学ガール】学習モチベーションを高めるために

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