脳の仕組み:理性脳と原始脳
理性能とは
例えば、「いま起きなきゃ遅刻するなぁ」と思いつつも、寝てしまうときがありますね。
理性では、正しいことは何かがわかっているのです。
ここでは「理性脳」と呼びます。
原始脳とは
でも、「火事だ!」と言われれば、どんなに熟睡してても飛び起きることもできますよね。
それが、原始的な脳の力です。
ここでは「原始脳」と呼びます。
人が行動しない理由は簡単。
人は、理性ではなかなか行動しない。
でも「原始脳」に訴えれば瞬時にパッと動く。
「理性脳」よりも「原始脳」のほうが強いからです。
その脳の仕組みを活用すると、説得力のある文章が書けそうですね。
プライベートでも、説得力が上がるはずです。
「売れる脳科学」より
by クリストフ・モリン、パトリック・ランヴォワゼ
説得の脳科学:広告、仕事、プライベートにも応用できる
脳を説得する
「説得」に、脳科学の知識を用いるとどうなるの?
- 言葉にできない事実がわかる
- 脳内の「目に見えないクリック」を発動させることができ、広告効果が高まる
- 今までのキャンペーンや戦略に疑問を抱くようになる
- 相手をぐっと引きつける「説得術」を身につけられる
マーケティングや、仕事上の問題だけに限りません。
プライベートの質も向上すると言われています。
生活にも応用できる
- 家族の複雑な心の悩みを理解でき、家庭環境が変わる
- なぜ人の気持ちを理解できなかったか、なぜ人の気持ちをこちらに向けられなかったかがわかる
- 他人を説得して安心と希望を与えることができる
- 生活の質が高くなる
脳の仕組みを理解すれば、仕事やプライベートでうまくいかなかった理由がわかるようになります。
つまり。
話が伝わるようになれば、仕事やプライベートの問題も解決しますね。
脳に訴える技術が身につけば、何にでも活用ができそうです。
既存のマーケティング(ウェブ解析)とはどう違うの?
インターネットでのマーケティング調査といえば、ウェブ解析ですね。
- ウェブサイトへのアクセスからユーザー行動を分析すること
- 検索ワードの分析や、ユーザーの悩みの調査などをおこなうこと
インターネットユーザーが、どんなキーワードで検索しているかを分析し、広告に反映させる。
広くおこなわれていることですが、実は、ウェブ解析には数学的な誤りもよくあり、不正確だそうです。
例えば、こんな事例があります。
- Facebook社は、動画広告の視聴時間の測定方法に問題があったことを認めた
- P&Gは、高い費用に見合った成果が得られないとして、Facebookを利用した広告費を大幅に削減した
考えてみれば当然のことですね。
なぜ人が行動するのかを、機械で解析し尽くすというのは不可能だということです。
ユーザーが、ネット広告を見てクリックをした理由は、数字だけ追ってもわからない。
ユーザーの脳の中に「目に見えないクリック」があるのです。
ウェブ解析に依存しすぎるのも問題。
ABテストも、正確ではなかった
マーケティング調査として、ABテストというのもおこなわれます。
- AパターンとBパターンの広告を作り、成果を検証するテストのこと
このABテストも、あまり正確ではないそうです。
テストでいい結果が出ても、実際にやってみたらダメだった、というのもよくあることだそうで。
広告で成果が出ないと、ヘッドライン・写真・文章を何度も変えたりしますが、正確なことは誰にもわからないというのが現実です。
なぜ、広告の効果が正確にわからないの?
人の脳内で何が起きているかは、誰にもわからないですよね。
広告という「刺激」に対して、脳がどのように反応したかまで、見ることができません。
あるときには結果がよくても、あるときには結果が悪くなる、ということが起こるのも、脳の反応は未知数だからでしょう。
また、ユーザー本人も、自分の気持ちを正確に言うことはできません。
だから、ユーザーに直接アンケートをとっても、正確な内容は把握できないのです。
アンケート調査も、絶対ではないということです。
だからこそ。
脳の仕組みを理解しておくと、とても役立ちます。
脳にアプローチをする方法がわかれば、効果的な広告が打ち出しやすくなりそうですね。
原始脳と理性脳~まず感じてから、考え始める
原始脳に訴えよう
原始脳とは、最も古い脳~「感情」と「注意」を司る
この本では、最も古い脳を「原始脳」と呼んでいます。
(科学的な呼び名とは違います)
- 脳幹(反射能)と辺縁系(情動脳)
- 呼吸など、生存に関する機能を調整する(無意識の領域)
- 注意と感情をコントロールする
- 刺激に対して真っ先に反応する
- 衝動的・直感的 → 警戒・直感・感覚で情報を処理する
- 情報処理が速く、瞬間的に行動を起こす(生命の危険に関わるため)
- 言語機能はない
- プログラムし直すことはできない
特に、「注意」と「感情」が原始脳によっておこなわれているという点が、注目すべきポイントです。
- 注意:感覚的情報のなかから、認知するべき情報だけを選択する機能
- 感情:周囲や自身に対する感じ方を形成し、意思決定に直接影響を及ぼす
「注意」と「感情」が意思決定をおこない、行動まで促しているのです。
無意識下に、瞬時に。
だから、「自分でもなぜ行動に至ったのかがわからない」という状態になるのですね。
無意識だからです。
感情的な反応は、種が生存できるように数百万年もかけて進化した適応メカニズム。
プログラムし直すことはできないそうです。
「感情をコントロールする」と言ったりしますが、そもそも無理なことなのかもしれません。
原始脳は最も古い脳。
では逆に、最も新しい脳は、どんな機能をになっているのでしょう?
新しい脳のことを、この本では「理性脳」と呼んでいます。
理性脳とは、最も新しい脳~原始脳の反応を調整する
- 大脳新皮質
- 思考、読み書き、複雑な計算能力
- ゆっくりと反応する
- リスクを予測・評価し、長期的な目標設定に関わる
- 過去や未来を心配する
- 常にアップグレードしている(コントロールしやすい)
いわゆる「理性」です。
じっくり考え、検討し、過去や未来のことまでも考えることができます。
意識できるし、ゆっくりと時間をかけることができるので、コントロールがしやすいのです。
私たちが「◯◯だと思う」と判断するのは、理性脳を働かせているわけですが……
理性脳も、無意識の「原始脳」に動かされているので、うまく説明ができないという状態になります。
常に、無意識が先なのです。
人は、無意識で感じてから、意識(理性)で考えている
刺激に対して、まず反応するのは原始脳。
「なぜ?」と聞かれて答えるときに、自分でも「とってつけたような理由」に感じることはないでしょうか。
感じているときは無意識なので、説明がつきません。
それを理性で考えて説明しようとするので、どうしても理由は後付けになります。
だから、本当の購買理由は、本人でさえもわかっていないのです。
アクセスやクリックの解析だけでは不十分な理由も、原始脳の解明が困難だからです。
人が行動する理由は常に、「無意識で感じて」→「理性で考えている」という順番です。
だから。
長々と難しい説明を先にしても、脳には響きません。
広告に限らず、誰かを説得をするときには、原始脳の存在を考えてみましょう。
原始脳に訴えると、説得力のあるメッセージになる
先に理性脳に訴えても、無視されるだけ
- 真っ先に理性脳に訴えようとしている
- 文章で相手を説得しようとしている
真っ先に相手の理性に訴えようとしても、無駄だということです。
感情が動かないため、「言っていることはわかるけれど……」となるわけです。
人を動かしたいなら、原始脳を刺激することが優先です。
ボトムアップ効果で説得力のあるメッセージを
説得力のあるメッセージを作るには、ボトムアップ効果をねらうことです。
- まずは原始脳をとらえる(興奮やショックを与える)
- 次に理性脳を納得させる
原始脳がメッセージを好意的にとらえると、瞬時に理性脳へと移動し、論理的思考と推論によって情報を検討するようになります。
まずは原始脳、次に理性脳。
必ずこの順番で訴えることが大事ですね。
まとめ:理性脳と原始脳とは
理性脳だけに訴えても「わかっちゃいるけど……」となるのが、関の山。
脳は、生存の危機を感じなければ動かないようにできているのです。
「脳は怠け者」とも言いますが。
「死なない」ことが最大の使命なので、余計なことにはエネルギーを使おうとしません。
最高の断捨離とも言えるかもしれませんね。
だけどやっぱり、人間らしく生きていたい!
あとからムクムクと理性が働き出すわけです。
「よく考えたら不安になってきた」と思うのは、「原始脳→理性脳」という順で脳が動くから。
だからこそ。
- 原始脳を刺激して、
- 理性脳を納得させる。
人を動かすには、この順序が大事。
広告におけるキャッチコピーは、目を覚ますために頬っぺたをピシャっと叩くようなもの。
感情に訴えずに、難しい話だけをひたすら続けると……確実に無視されてしまいますね。
原始脳→理性脳という順を覚えておくと、自分のモチベーション維持や他人の説得などにも活用できそうです。
ということで。
まずは原始脳を刺激する。
そのあと、理性脳へ説明をすること。
説得は、順番が命!