駐車場のおじさんの笑顔が好きだった。
「おはようございます!」
「いってらっしゃい!」
いつも明るく元気に、目を見ながら声をかけてくれる、駐車場のおじさん。
駐車場の前を通るのが楽しみで仕方ない。
満面の笑顔で、大きな声で。
憂うつな日は、その声を聞くと元気になる。
元気な日は、ますます元気になる。
だから、ちょっと遠回りなんだけど、わざわざその駐車場の前を通りたくなる。
いつも不思議に思っていた。
このおじさんは、どんな気持ちで働いているんだろう?
駐車場の利用者にだけではなく、道ゆく人、全員に声をかけてくれる。
近くに小学校があるので、子どもを守りたいという気持ちかな。
交通事故をなくしたいのかな。
明るい町にしたいのかな。
何かしらの想いがあるはず。
でなければ、あんな笑顔は出てこない。
「やらされ仕事」ではない、本当の仕事をしている気がした。
だけど、あるときから姿を見せなくなった。
新しいおじさんが立つようになっていた。
あのおじさんは、どうしたんだろう?
気になったので、聞いてみた。
「今までの人は、辞めちゃったんですか?」
「体調を崩しちゃってね。彼は、ここの仕事を気に入っていたから、残念がっていたけど……」
そうだったんだ……
本当に残念。
「いつも挨拶してくれるので、うれしかったんです」
「彼は、仕事が楽しいって言ってたよ。ここに来ると元気になる、と」
あぁ、やっぱり……。
本当に楽しそうだった。やっぱり心からの笑顔だったんだ。
「僕も引き継いでみて、感じたよ。本当に楽しいんだよ。挨拶をするのが。話しかけてくれる人もいるし。この仕事はいいね」
なんと!
こんなにも楽しく仕事をしている人って。
自分の仕事が好きだと言える人って。
どれくらいいるんだろう。
だから、駐車場の前を通ると、いつも元気になるんだな。
そういう働き方っていいな。
そんな気持ちで働いてみたい。
仕事の喜びと、挨拶の喜びを、駐車場のおじさんに教えてもらった。
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